宮内勝典さんのホームページ「海亀通信」中の「海亀日記」(2011年6月21日付分、*印枠内)を以下に紹介します。
なお、「海亀通信」にはリンク自由であるとの記載があるので、リンク先を以下に貼り付けます。(by Ben
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http://pws.prserv.net/umigame/
2011年6月21日
所用があって、三日ほど小樽へ行っていた。小樽商科大学でスピーチをしたとき、福島原発の事故について触れた。いつのまにか気がついてみると、この狭い地震国に54基もの原発が林立していていた。わたしたちが無関心のまま暗黙の同意をしてきたからこそ、こうなったのではないかと語ったあと、ポーランドの作家ヤセンスキーの『無関心な人々の共謀』の一節を朗読した。
敵を恐れることはない……敵はせいぜいきみを殺すだけだ。
友を恐れることはない……友はせいぜいきみを裏切るだけだ。
無関心な人びとを恐れよ……かれらは殺しも裏切りもしない。
だが、無関心な人びとの沈黙の同意があればこそ、 地上には裏切りと殺戮が存在するのだ。
外へ出てキャンパスで一服しながら、松山巖さんと話しあった。松山さんは『無関心な人々の共謀』を聞きながら、ふっと思いだしたことがあるという。敗戦後、あの戦争は国策であって、自分たちはやむなく加担せざるを得なかったのだという言い訳や言説が、世間にひろがっていた。そうした風潮に対して、坂口安吾が、
「嘘つけ、嘘つけ、嘘つけ!」
と烈しく書いているが、その一節を思いだしたと松山さんは語ってくれた。